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第1257号 自分の意見を言える子に

こんばんは。パピーいしがみです。

今、宝塚歌劇団の事が話題になっていますね。

若い劇団員さんが多くの仕事を押し付けられて、先輩にもいじめられて、睡眠時間も3時間しか取れなくて・・・結果、自ら命を絶ってしまったとのことでした。

でも宝塚歌劇団では「いじめはなかった」と言っています。いじめがあってもなくても、激しいパワハラ環境をそのままにしていたことに、歌劇団の責任は重大だと私は考えています。

あの華やかな世界の裏側は、あまりにも汚れていることに衝撃を受けた方も多かったのではないでしょうか?

でも「これが現実」であり、まだまだ日本の企業や組織(世界的にも)こういうことは「珍しくない」のですね。

だから私たちは「そんなのおかしい!」って、自分で自分の気持ちを言わなければならないのです。(私は、子供達みんながそう言えるようになってほしくて、常々お願いしています)

そう言うと亡くなった方に非があるかのように聞こえるかもしれませんが、そんな事は決してなく、

責任感が強いからこそ。その世界に大きな憧れと希望があったからこそ。思いやりや優しさに溢れていたからこそ(残される後輩達が先輩からいじめられて欲しくない気持ち)この悲しい結末になってしまったのです。

以前、「逃げるは恥だが役に立つ」というドラマがありましたね。

新垣結衣さんと星野源さんが出て「恋ダンス」が大ヒット。あのかわいらしい振付と、面白いストーリーに多くの方が釘付けになりました。私も毎週欠かさず見ました。

あの時、新垣結衣さん演じる(森山みくり)がよく言っていた言葉に「それは〇〇の搾取です」がありました。

「搾取」とは、主に牛の乳や、草木の汁などを搾り取る事を言いますが、ドラマで使われていた搾取の意味は、

「階級社会で、必要な労働時間以上に働かせたり、その労働生産物や成果を取得すること」です。簡単に言っちゃうと【立場を利用して不正に働かせたり、できたものを不正に奪う(搾り取る)】ってことです。

それをドラマでは「“やりがい”の搾取です」と言ったり「“好き”の搾取です」と言ったりしていました。

ご存じない方の為に一つ説明しますが、新垣結衣さん演じる(森山みくり)は、面白い妄想をすることが得意な人で、友達の「ヤッさん」のお店を繁盛させるアイデアを出していると「低迷している商店街を活性化するために会議に参加してほしい」と言われます。

本人も軽い気持ちで参加し「こんなやり方はどう?」「こうやったらお客さんが来るのでは?」と、商店街のおじさん達には考え付かないアイデアをポンポン提案します。

その様子を見ていた自治会長は、みくりさんに「地域活性のプロジェクトに参加してくれないか?」と頼みます。ただし資金がない為「ボランティア(無償)で」です。

でもみくりさんは、はっきり「それはできません」と言います。「人の善意につけ込み、労働力をタダで使おうとする行為は“搾取”です」と。

私は「よく言った!」と、もう拍手ものだったのですが、この言葉、「これを言ったらその場はしらけるだろうな~」とか「他の人から何て思われるか分からないし、そんなこと言えない」と思う人が大半だと思います。

(みくりさんも「あざとい」と周りから言われていましたしね)

なので、同調圧力や、周りの目線、その場の雰囲気を気にして「イヤだけど引き受けることになっちゃった」となる人がほとんどだと思うのです。

そして最初にお話しした宝塚歌劇団の件に戻りますが、亡くなられた方は、先輩からのいじめを受けている時「こんなところにはいられない!」とさっさとやめればよかったのです。

でも宝塚歌劇団と言えば、なかなか合格できなくて有名です。2023年の合格率は15.3倍だったそうです。ピーク時は20倍を超えていた時もありました。

宝塚歌劇団の試験は、バレエ、声楽、ソルフェージュ(貰った楽譜を正確に歌う)などそれはそれは、長期間に渡る訓練が必要な物ばかりです。そして受験できる期間は14歳~18歳まで。受験のチャンスは最大で4回。

ですから受験する方はどの子も小さい頃から宝塚に憧れ、入団を目標に地道にコツコツと努力して、さらに受験前は専用の塾(授業料だけで年間100万以上もかかり、さらに夜行バスや飛行機を使って通う子も)にまで入って数々の努力を重ねています。

もう相当な憧れと入団への強い希望、そして親の多大な協力がなければ合格する事は不可能です。

そこまで掛けて晴れて合格となったら(親にも経済的な負担をかけているし)辛いことや苦しい事も「頑張って乗り越えるんだ!」って思いますよね。

ところが宝塚歌劇団の給与は、トップスターは除いても一般の団員の給料は本当に少なくて、一人で生活することなんてとても無理ですし、

技術の高い子は先輩からのやっかみや嫌がらせは当然ありますし、こういう芸能の世界では、ほんの一握りになる為に、さまざまな試練が次から次へと立ちはだかります。

そしてご存じでしょうか?宝塚歌劇団って、阪急電鉄が「もっとたくさんのお客さんに電車を使ってほしい」と言う理由から作られたのです。

公演のたびに満席になるのに、働く団員さんたちは満足に生活できないような薄給で、寝れないほどの長時間労働をしている・・・としたらあるはずの利益はどこに行くんでしょう?もうお分かりですよね。

宝塚歌劇団の歴史は何と1914年(大正3年)プールを改造した「パラダイス劇場」で、宝塚少女歌劇第1回公演が行われ、1919年に「宝塚音楽歌劇学校」が作られて、生徒と卒業生で組織される「宝塚少女歌劇団」が発足されて今に至ります。

昔からのしきたりが色濃く残っており、縦の規律(上級生、下級生の格差)はとてつもなく大きくて、今でいうパワハラは当たり前。それは「上級生を敬う」どころではなく、上級生からしたら下級生は下僕扱い。その伝統が閉鎖的な環境でずっと引き継がれてきたのです。

やる気もあって、努力家で、真面目だからこそ、先輩たちの理不尽な命令にも服従し、嫌がらせや厳しい叱責(時には暴力)にも耐え「きちんとやろう、しっかりしよう」と頑張っちゃうのです。

そして今回の件は他の人が先に辞めていなくなり、その中で自分まで辞めてしまったら後輩が可愛そう、あの先輩たちに直接当たられるのが判るから、後輩達を守るためにも・・・という優しさもあだになったと思うのですね。

直接の原因は(無いとされる)先輩からのいじめだったかもしれません。

でもそんな状況や長い悪しき伝統を、知っていて改善しようとしなかった組織(会社)に問題があるし、彼女たちの経営母体に全責任があることは明白です。

まさしくそれは【やりがいの搾取】であり【憧れの搾取】【真面目さの搾取】【優しさの搾取】なのです。

でも(大事なのはこれからです)、こういう組織は宝塚だけではありません。

以前、【株式会社 電通】で亡くなった「高橋まつり」さんと言う方がおられましたね。この方も東大を卒業されて、とてもまじめで努力家だったと聞いています。

他にも、身近なところでは病院の看護師さん。介護施設のケアマネージャーさん、介護士さん。保育園や幼稚園の先生、調理師さん、数々の職人さんなど・・・。

その資格や技術を得るために長年努力してきた人や、福祉や保育で「人の為に」と努力する真面目で辛抱強い方々が、ないがしろに扱われることが多いのです。

たとえば、私が頂いた相談の中には「なぜか、私ばかり残業をさせられる」「私ばかり夜勤が多い」「休日出勤を当たり前の様に命令される」「休みの日に電話一本で駆り出される」などもありました。

これってその人が真面目だったり、仕事に一生懸命だったり、優しい方だったり、そして何より『遠慮して自分の意見を言わない方』だったりすると、相手がそのように振舞うようになってしまうのです。(相手をモンスターに変えてしまうのです)

先ほどの亡くなった宝塚の団員さんは、親からすると自慢の娘だったと思います。仕事は真面目で、責任感もある。そして後輩思いの優しい面もある。もう「人」としては100点を付けられる方だったのでは?と思うのです。

でも「それは違います!おかしいです!」ともし言えていたら、こうはならなかったのではないでしょうか?

ちなみに先ほど私に相談してくださった、看護師さん、介護士さん、保育士さん、サラリーマンの方には「それって労働基準法違反ですよ。残業や休日出勤を指示するにはそれに見合う報酬や、代休が必要になります」って上司に言ってください、とお願いしました。(もちろんご自分が労働基準法を学ぶことも)

労働者の権利は、キチンと法律で守られていて「労働基準監督署」というところが私たちの労働に不利益を与えていないか?とチェックをしてくれていますから、労働基準監督署に調査を依頼すれば、その上司だけでなく社長まで厳しく指導されるのです。

人に人権があるように、労働者には労働者の権利があって、それを無視して働かされることは「許されない」ことなんですね。

もちろん「ほんの小さいことも許さない」という態度だと、その組織では「使いにくい奴」となってしまうので、乱用はなさらない方がいいですが、それでも「知っている」のと「知らない」のでは大きく違うのです。

又、もしその法律を知らなくても「おかしい!」って感じた時には「それっておかしくないですか?」って言えれば相手は「あ、この人は自分の都合のいいようには使えないな」って思うのです。

そしたら相手もあなたに一目置くのです。そして自分のやりすぎを認識できるのです。それが結果として「自分を守る抑止力」になるのです。

そうそう。私が知っているある会社(食品加工の会社です)では、仕事上で怪我を「自宅で転んだ」とか「自宅での作業中にカッターで切ってしまった」など【仕事以外の怪我だと言え】と言われていた所もありました。

なぜか分かりますか?

「自分でやった怪我」なら健康保険が適用されます。でも「仕事上の怪我」だと保険は適用されず、高額な支払いをしなければならないのが一つ。(従業員は自分のミスでもあるので治療費を会社に請求しにくい)

そしてもう一つは「仕事上の怪我=労災」となった場合、その頻度が多いと、会社が払っている労災保険料が増額されたり、会社に調査や指導が入り罰金を命じられる事があるからです。

(そんな事故が無いように「会社が管理しなさい」と法律で定められていますが、それを無視したり、周知徹底できていなかったり、労務管理を全く知らずに昇進して上司となっている無知な者が多いって事なのです)

真面目な従業員の【誠実さの搾取】をして、法律を無視する会社や組織はいくらでもあるのです。(表面上はブラックではない会社でも、知識がない者が上司でいるケースが非常に多いです)

でも、これは仕事の話だけではありません。子供たちの学校での先輩・後輩、同じクラスの友達間、クラブ活動でのコーチや監督の言動、先生からの暴言。ママ友の間・・・もう枚挙に暇がありません。

要は・・・いつでも、どこでもあり得る事なんです。(教えてくれる人が少ないので、知らない人があまりにも多いのです)

多分、宝塚の母体会社では(特に総務や人事では)完全に把握していて、当然部長や課長などは熟知していると思います。

だから宝塚歌劇団ではあえて「社員」ではなく「個人事業主」として契約をしているのです。それって「労働基準法を適用させない為」です。

「個人事業主」なのに専属の縛りを付けて、又、とてつもなく安価な賃金の契約ですから、私は悪意があって意図的に仕組まれた、まさしく【やりがいの搾取】【憧れの搾取】【誠実さの搾取】だと思っています。

ところが(何度も言いますが)どこにでもあります。

悪しき習慣は簡単にはなくなりません。いまだにスポーツの強豪校では体罰がありますし、今後も誰もが必ずその状況に遭遇するでしょう。「必ず」です。

でも「それはおかしい」と感じ、それを言葉にできる事で自分を守れるのです。

逆に「それをおかしい」と思えず、言葉にできなかったら、悪意を持ってあなたに指示命令をしようとする人や組織は沢山ある、という事なのです。

ですから「品行方正」「良い人」「素直な人」だけではいけないのです。
違っている事には「それおかしいよ」と感じ、言える事。

「自分の意見を言える」って事がすごくすごく、すご~~く大事なのです。

是非、参考にして頂きたいです。大事なあなた自身。そして大事なあなたの子供を守るために!!!

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パピーいしがみ 人材育成の現場から、育児・子育てこそが、本人の一生のベースになると痛感し、吸収したノウハウやアイデアを自分の3人の子育てに応用。子供達が喜びと自信を持って成長していく中で、親としての充実感と予想をはるかに上回る結果に驚愕する。2003年あまりの少年犯罪の多さ、幼児虐待の事件に心を痛め、その子育て育児方法をインターネットで公開。熱烈なサイトのファンからの要望で、テキストを作成し通信講座として紹介。著書も好評で現在は会員さんから毎日届く悩みや相談に応えている。

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